【神戸邂逅】TEAM クラプトン・山口晶さん#3 資本2.0へのヒント

【神戸邂逅】TEAM クラプトン・山口晶さん#3 資本2.0へのヒント

連載企画【神戸邂逅】とは

koubekaikou神戸およびその周辺地域にて、大資本が集まる東京とは一線を画すような取り組みを行う人に焦点をあてたインタビュー企画。邂逅とは偶然めぐりあうという意味。思いもよらなかった神戸の魅力に出会えるかも。


本企画6人目としてご紹介させていただくのは、内装業を主として営むTEAM クラプトンの山口晶さん。現場で手を動かしつつも、常に考えることを止めない、日々手と頭をフル回転させている山口さん。ものづくりという自分の手の届く範囲内という意味での「狭さ」とは対照的に、思考の射程の「広さ」に驚かされます。


 

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山口晶

TEAM クラプトン

みんなでつくろう”をテーマに、施主や友人、近所の人々、
SNSでの呼びかけに呼応した一般の人々とともに、
ものづくりに取り組む。近年若手職人の工房やセンスの良いショップが
軒を連ねるようになった王子公園高架下にベースを構えている。

 

お金の多寡では測れない幸せ

―ものづくりに目覚めた原点的な経験はありますか。

「レゴですね!」

―即答ですね(笑)

「ぼくの家はテレビゲームが禁止で、森が近かったので、基地作りとかツリーハウスとか、自然の中で遊ぶ=なんか作ってる、みたいな感じでした」

―将来、ものづくりを仕事にしたいと意識しはじめたのはいつ頃でしょうか。

「父が家具会社を経営していたので、小さな頃から漠然とその会社を継ぎたいとは思っていたんです。おやじは、木っぽい加工はしているけど本物の木材は使用していない量産系の家具を作っていました。ただ、そうやって大量生産・大量消費のプロダクトを作っていると金額で叩かれるなり、なんなりで面白くないなって思いはじめて。それよりかはワンオフのもの(特定の目的があって作られるもの)をお客さんの顔が見える状態で、一緒に作っていきたいと思って結局継ぐのはやめました」

―確かに、大量生産大量消費のモデルは今の社会では立ち行かなくなっている気がします。

「そうですよね。いきなりですけど、少し前に、軽自動車に乗ってたぼくらの前をBMW6シリーズが乱暴に追い抜いていったんですよ。“危ない”ってぼくは言ったんですけど、隣に座っていたヤツが“あれぐらいの性格じゃないとBMWには乗れないよ”って言ってたのがなぜか頭に残ってて。BMWに乗ってた人は、もしかしたらステータスを得るためにそれに乗っているのかもしれない。その人がどんな生活を送っているのかは分からないけど、ぼくらは(シェアハウスで)共同生活をしていて笑顔が絶えない、もちろん喧嘩もしますけど、仲間と笑えて過ごせている。そうすると、何を儲かっているというのか、何を幸せというのか、何を賢いというのかなと疑問に思って」

シェアハウスの様子。シャンパンはなくても、ここにはビールがあり、何より人の輪がある

―お金がなくても幸せな人はいますもんね。

「例えばカフェを経営している知り合いは、原価率50%とかでお店を回していてオープンして1年くらい経つのにまだ自分に給料が出てないみたいなんですよ。赤字にはなっていないけど、ローンを返すのと家賃を払うので終わっちゃう。でも、その人はお金を儲けたいわけではないんですよ。その人は4050代の子育てが一段落した女性なんですけど、そのカフェでラテを淹れられること、自分のカフェという居場所が欲しいんですよね。カフェがあることによって、農家さんから美味しい食材を仕入れることができて、好きな料理を大切な人たちに振舞え、彼らに喜んでもらえる。その人、たまに他でバイトもしているんですよ。カフェ経営はお金にはなっていないけど、その人が儲かっていないかというと、ぼくは儲かっていると思っています。お金じゃない、何かを得ているわけだから。以前、“クラプトンのお施主さんって、賢い人が多いんですか”って聞かれたんですけど、僕らのお施主さんは賢さのベクトルが違うんだと思います。ただ、ひとつ言えるのはみんなめっちゃ熱い人らやなって」

お金ではない新しい連帯の仕方

―資本主義から距離を置いた生き方ですね。

「資本主義、大量消費社会が好きじゃないんです。ただ、ぼくは現状、その資本主義社会に生かされてる。だから、それを全否定するわけではないですが、確実にこの社会を違う方向にシフトさせていきたいなと思います。極端に“資本主義反対!”って街中で運動を起こしても、たぶん影響する人って多くはないから。それよりもたくさんの人を0.1%ずつでもいいからゆるやかに変えていければなと」

―現状の否定や反対に走るのではなく、それを一旦認めたうえでできること、ということですね。

「例えば、クラプトンの仕事では、お施主さんやぼくらが、“新しいお店を作るから一緒に内装作業を手伝ってくれないか”って周りの人たちにお願いするわけなんですけど、そうやって誰かに頼んでみることで、お互いに何かを頼める関係性が生まれるじゃないですか(頼まれた側は、次なにか自分にあったときに、その人に頼みやすくなる)。それってお金が挟まっていない。いまはお金を払うといろんなサービスが受けられるけど、そうじゃなくて友達とか家族とかにお願いする選択肢もある。だから、まずは彼らのお願いを聞き入れてあげられたらいいじゃんって。そういう社会の方が豊かだなと感じますし、ぼくらも、そんな社会をものづくりを通して構築していきたいなと思っています」

―最後の質問です。神戸で、何か活動を始めたり継続するにあたって利点があるとすれば何だと思いますか。

「例えば、神戸R不動産の小泉さんとか、神戸のキーになる人に出会いやすい事ですかね。そこでの出会いがぼくら自身、市役所の人や学会とかに広がったりしました。神戸は都市のスケールとしてほどよいから、神戸にもいろいろなコミュニティはあるだろうけど、自分たちに合うコミュニティに出会い、つながるまでのスパンがちょうどいい感じでした。そして、仕事の量もほどよい。少なすぎるとだめですけど、多すぎると自分のやりたい仕事ができなくなる。仕事を詰め込まれすぎると、“もっとこだわってこういう風にしたい”っていうのができなくなるから。その点、神戸はゆったりとした空気感があるから良いなって思います」

取材後記

本企画は、山口さんで6人目を迎えました。彼ら6人に一貫して共通しているのは、抜群の行動力です。そしてその姿は、一見すると、「能動的」です。

ただ、山口さんを見ていると、むしろ逆なのではないかと思いました。山口さんは何よりも楽しさを大事にします。そして、その”楽しい!”という自分の衝動に自分が駆動されているような印象を覚えました。

一方で、世間で”一般的に”受動的と言われる人は、何かの衝動を感じたときに、まずできない理由を考えてしまいます。つまり、”一般的に”受動的と言われる人ほど、実は能動的に自分の衝動を抑え込んでいるのかと。

だから、山口さんのように、自分の欲動の波に、そのまま自らの身体を委ねる(=行動する)というのは、ある意味受動的なのだと感じさせれました。この社会では一般的に、能動的なことが良しとされますが、目の前の人や世界を敏感に受信し、そこで感じた自らの衝動に”逆らわない”という受動性が必要なのではないかと感じたインタビューでした。


TEAMクラプトン・山口晶さん 全3回

#1 DIYの壁は、DITで越えられる

#2 みんなでつくることで、同時につくられるもの

#3 資本2.0へのヒント

仲村 友樹

政治、ビジネス、文学、アート、自然まで色々なことに興味があります。むさぼるように読む本や雑誌からの知識でぼくは成り立っています。ただ、頭でっかちにならないように一応は気をつけているつもりです。

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