【神戸邂逅】歌手・小関ミオさん#2 今この瞬間と愛を優先して生きていく

【神戸邂逅】歌手・小関ミオさん#2 今この瞬間と愛を優先して生きていく

連載企画【神戸邂逅】とは

koubekaikou神戸およびその周辺地域にて、大資本が集まる東京とは一線を画すような取り組みを行う人に焦点をあてたインタビュー企画。邂逅とは偶然めぐりあうという意味。思いもよらなかった神戸の魅力に出会えるかも。


本企画5人目としてお話を伺ったのは、シンガーソングライターの小関ミオさん。インタビュー後編となる本記事では、音楽制作に携わる人ならではの「言語」の捉え方、美輪明宏さん訳詞による、シャンソンの不朽の名曲『愛の讃歌』に対する思いなどを語っていただきます。


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小関ミオ

シンガーソングライター

昨年末から神戸を中心に
路地裏の名店を回る
「HYOGO 100 LOVE♡LIVE」をスタート。
その集大成となるワンマンライブが
11月10日にクラブ月世界で行われる。
ENVIE名義で作詞作曲活動も行う。

前回の記事『#1 こんな時代だからこその音楽のかたち』はこちら

言語も楽器のひとつであることに気付いた

―小関さんは英語、フランス語に堪能、『Before Monday』では日本語を含む3 言語を織り合わせた歌詞を書かれています。作詞する際、言語のそれぞれの違い(意味や発音など)をどのように生かしているのでしょうか。

「音に一番ハマる言語を自分なりに選んでいます。中高生の時は、ラジオから流れてくる好きな洋楽の歌詞をカタカナで書き取って歌ってたり、曲を聴いた後に歌詞カードを見て“あぁこういう表現してたのか!”って答え合わせをしてました。その曲を好きになるのに、言葉の意味よりも響きに惹かれることが多かった。メロディもだけど、英語とかフランス語の言語そのものが持つ響きにすごく魅力を感じてたんです。私は楽器が全然弾けないんだけど、フランスに居たときに“そうか、言語も楽器なのか”って思うようになって、フランス語の響きをサウンドとして取り入れてみたり、フランス語の歌詞は韻を必ず踏むんですけど、韻を踏んだらリズムにさらに深みが出るし、心地いい響きというのを探りながら作っています。『Before Monday』も頑張ってフランス語で韻を踏んで作詞してるので、是非歌詞カードを見ながら楽しんで頂けたら嬉しいです」

p6-jacket-omote_new2Before Monday』は6月の Kiss FM KOBE 邦楽推薦曲HOTRAXX EXTRAに選出された

―ジャズにしろクラシックにしろ、歌詞のない音楽を聴いても、無意識的に私たちは“これは悲しい曲”、“これはラブソングだ”とその曲の音色から「言葉の意味」に似た印象を感じ取ることがあります。

「分かります!昔々まだ言葉が生まれてなかった時代、私たち人間は歌で会話してたともいいます。音楽にはその音色だけで伝える力があるけど、奏でられる1音1音にはその人の生き様が全部出ると思うし、伝わり方も違うと思うから、とにかく今を一生懸命生きて、いい歌を歌えるようになりたいです」

―歌詞つながりでいくと、小関さんはエディット・ピアフの『愛の讃歌』を美輪明宏さんの訳詞で歌われています。日本でポピュラーな『愛の讃歌』の訳詞は岩谷時子さんによるもの(歌:越路吹雪)だと思うのですが、美輪さんの訳詞で歌いたいと思った理由を聞かせてください。

「私にとって、本当の愛は無償で、覚悟そのもので、深くて強い。美輪さんの『愛の讃歌』の訳詞はまさに究極の愛だと思いました。聴いた瞬間真っ先に自分の家族を想って涙が止まらなくなった。私の誕生日は8 月9 日。長崎へ原爆が投下された日だから、いつも誕生日は祈る日で、当時のことに思いを馳せる日です。“歌い手は、平和を願う歌を歌う義務がある。何故なら平和でなければ文化は育たないから”とは名古屋の日仏シャンソン協会の元館長、加藤ハツさんのお言葉。そして、美輪さんは原爆、戦争を経験した方。平和を願う意味でも、美輪さんの『愛の讃歌』は自分にとってもすごく特別だから、歌い継いでいきたいと強く思いました」

一番辛いはずの人から励まされた経験

―以前、私がお邪魔させていただいたライブでも、小関さんは、東日本大震災や熊本地震で被災された方々への思いを語られていました。今もこうしてお話を聞いていると、“誰かのために”という強い思いが言葉の節々から感じられますが、何かきっかけがあったのでしょうか。

「会社を辞めて初めての仕事が、コーラスの仕事だったんです。CDの中の1曲のうっすらと流れるコーラスでしたが、当時Twitter で“あのアルバムの中のあのコーラスが良かった”ってつぶやいていた人がいたんです。そのときは思わず自分からコンタクトを取りました、“本当にありがとうございます”って。それが2010 年のことだったんですが、その次の年にあの大震災が起こりました。そのTwitterの方は、東北の方でした。その人が住んでいた荒浜地区にも津波は襲いかかりました。当時、私がTwitterで震災についてつぶやいていたら、その方から“心配してくださってありがとうございます。いつか東北にも歌いにきてくださいね”とレスポンスがありました。その方は震災以降“傷ついても大丈夫、音楽は聞こえる”って、言葉にできなくても声にならなくても、思いを伝えられるようにと、『HOPE for project』という音楽チャリティイベントを立ち上げて活動されています。そして、今の荒浜のことをTwitterやInstagramを通じて私たちに教えてくれます。今もずっと彼らの闘いは続いている。自分が本当に本当に辛いのに、彼は私に“頑張ってください。応援してます”って言葉をくれた。特にあの震災以降は自分が歌う意味だったり、自分には何ができるんだろうってすごく考えるようになりました。荒浜にも歌いに行ける自分になりたいと思っています」

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―ただ、そうやって“誰かのために”という思いが強いと、小関さん自身がいっぱいいっぱいになってしまいませんか。

「なります。自分の無力さに途方に暮れるしすぐ泣くし、今もこうやって話しているだけで泣きそうだし(笑)。ただ、自分にできるやり方で自分にできることをやり続けていきたいって思います。それはまず自分のために。自分に納得するために。そこから人のためになれる自分になりたい。経済的にも余裕がないからすぐには無理だけど、少しずつ少しずつ形にしていきたい。社長とも話しているんです、今兵庫県内の色んな場所をライブで回っていますが、もっと規模を大きくしたいねって。全国をキャラバンで回るみたいな、自分の足で届けるってことは続けていきたい。運ぶものも多くなるし、だから今はハイエースを買えるようになりたい(笑)。ガスコンロを車に積んだら現地で食材を調達してお客さんに振るまえるし、お金がなくてイベントが出来ないところにもミュージシャン達と一緒に音楽を楽しんだり、飲んで食べてっていう機会を届けられる。もし、災害が起きても、それに乗って行って誰かのために何かできる。そうやって全国を巡れたらという大きな夢もあります。

あと本気で紅白に出たいって夢もある。“あの時まだお客さん1人とか2人とかだったアイツが、今はこんなところでライブやってるよ”ってもしなったら、皆喜んでくれるかなぁなんて。そうなったらいいなぁって夢を描きながら活動してます」

未来の自分は見えなくても、今、目の前の自分のことならわかる

―幼いころからダンスを習っていたり、夏木マリさんの舞台でコンテンポラリーダンスを披露したり。身体表現であるダンスが、歌・ライブ活動に生きた経験はありますか。

「私のことを全く知らない人たちにまず自分のパフォーマンスを見てもらえなければ何も始まらない。一番はビアホールイベントでライブをしていたときに感じました。みんなお酒を飲んでおしゃべりをしていて、歌とかはどうでもよかったりする。でもちょっとでも聞いてもらえるにはどうしたらいんだろうって考えて。きれいに歌うだけじゃなくて、笑顔で歌うだけでもなくて、そこに身体表現が加わったら….例えば、自分から客席に歩み寄ったら、何か変わる。これはマリさんから教わったことでもあるけど、状況を瞬時に判断してどう自分で自分をプロデュースできるかを考えるんです。例えば、客席に降りていって、お客さんの隣に座ってビールを勝手に飲んだこともあります。周りにあるもの全てを演出の手段として考える。“ここは飲み放題だから、おかわりを取りにいけば大丈夫だよ”とは一言添えてあげて(笑)。

マリさんの舞台の経験がなかったら、“みんな聞いてくれない”って泣いていたかもしれない。表現って人から見てもらわないと、表現にはならないから。見てもらうためには、自分が持ってるものを全部使わなくちゃと思うし、引き出しを増やしていくことはこれからもずっと課題だなと思います」

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―最後の質問です。小関さんは、『ENVIE』(仏:希望の意)という名義でも音楽活動をされています。今の時代、経済的にも社会情勢的にも将来に希望を抱けずにいる人々が多いと思います。大仰な質問にはなりますが、彼らが希望を持って生きていくためにはどうしたらよいと思いますか。

「ENVIE って大きな希望という意味ではなくてどちらかというと英語の“want”に近いんです。小さな衝動というか、日々の小さな願い。“あの人の笑顔を見たいな”とか ”どこか行きたいな”とか。そういったものを大切にしていたら、おのずと今の状況から変化が起きる気がするので、まず自分はどうしたいのか、What do you want?って聞きながら、答えを探しながら….光を見失わないように、自分で出した答えを信じるってことも大事にしてます」

―未来に対する希望というよりは、現在の時制での”want”を大切にするということですね。

「はい、どうやったって未来は分からないです。私もこんな熱いこと語っていますけど、“来年どうしよう”ってやっぱり考えます(笑)。コツコツやっていればきっといつか、あの時があって今があるって思える日が来るから。今この瞬間と愛を優先して生きていきたいと思っています」

取材後記

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小関さんを目の前にして「あ、この人やっぱり表現者だ」と僭越ながら感じたのは、感情や思いをちゃんと言葉にのせられていたところだった。例えば、“だれかのために”といった類の言葉は、発言者によっては偽善的に捉えられてもちっともおかしくない。でも、小関さんは本気で(“だれかのために”と)思っているんだと感じさせられた。もちろん、それが小関さんの本心だからってことは大前提としてあると思う。ただ、それにしてもだ。つまり、本気で思ってることでも相手にちゃんと伝えられない伝わらない、というのは誰しも往々にしてあると思う。

プレゼンなどの小手先のテクニックではまったくなく、もっと本質的な階層での人間との対峙力。おおげさかもしれないけど(かつ抽象的だけれど)、インタビューのなかでそんな力を小関さんから感じました。


 

歌手・小関ミオさん 全2回

#1 こんな時代だからこその音楽のかたち

#2 今この瞬間と愛を優先して生きていく


 

仲村 友樹

政治、ビジネス、文学、アート、自然まで色々なことに興味があります。むさぼるように読む本や雑誌からの知識でぼくは成り立っています。ただ、頭でっかちにならないように一応は気をつけているつもりです。
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