【神戸邂逅】歌手・小関ミオさん#1 こんな時代だからこその音楽のかたち

【神戸邂逅】歌手・小関ミオさん#1 こんな時代だからこその音楽のかたち

連載企画【神戸邂逅】とは

koubekaikou神戸およびその周辺地域にて、大資本が集まる東京とは一線を画すような取り組みを行う人に焦点をあてたインタビュー企画。邂逅とは偶然めぐりあうという意味。思いもよらなかった神戸の魅力に出会えるかも。


本企画5回目としてご紹介させていただくのは、シンガーソングライターの小関ミオさん。アーティストである彼女の目には、神戸の街はどのように映っているのでしょうか。


流麗なメロディーとリリック、息遣いにさえ音色がついたようなヒーリングボイス。「あなたの歌は神戸に合う、ぜひ歌いにきてください」、その一声から始まった。

HYOGO 100 LOVE♡LIVE」。来月11月10日のクラブ月世界でのワンマンライブをゴールに、(当初の予定を超え)これまで県内100カ所以上を巡ってきた。ジャズバーやナイトクラブが隆盛を極めていた往時の神戸を知る人々は、投げ銭方式で各地を回る彼女の活動を見て、「あの頃を思い出す」と話す。手のひらですべてを済ませられるこの時代に、自分の足で歌を届けに行く。

img_9199ネットのインタラクティブ化が進んできたとはいえ、この空気感や温度感はやはりライブならでは

 

 

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小関ミオ

シンガーソングライター

昨年末から神戸を中心に
路地裏の名店を回る
「HYOGO 100 LOVE♡LIVE」をスタート。
その集大成となるワンマンライブが
11月10日にクラブ月世界で行われる。
ENVIE名義で作詞作曲活動も行う。

“歌っていいよ”って神戸に言ってもらえた気がした

-当初は、東京で会社員をされていた小関さん。退職して本格的に表現の道に進もうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

「会社に勤めて3年目の時、広告代理店に勤めてる大学時代の友人からあるweb CM用に“フランス語で曲作れる?”と連絡があったんです。“ミオってフランス語ペラペラだったよね、歌上手かったよね”ってそんな軽いノリで。曲作りの知識は何もなかったんですけど、どうしても作ってみたくて“やってみる”と返事して、そこからDTM(Desk Top Music)を独学で始めてフランス語で詞を書いてメロを作って録音して、生まれて初めて自分で1曲を作りました。残念ながらCM曲には採用されなかったんですけど、“あ、私曲作るの好きだ”ってその時目覚めたというか、そう思ったら止まらなくなりました」

―もともとはバレエを習っていたとか。

「はい、小さい頃の夢はパリ・オペラ座のバレリーナというぐらい、青春時代はクラシックバレエ漬けでした。将来はきっとパリに住んでいるはずと思い込んでいたので、小学生のときからフランス語を意識して学び始めたり。高校生からはヒップホップ音楽にのめり込んでバレエだけじゃなくて何でも踊れるダンサーになりたいと思って、ヒップホップダンスを習い始めたり、コンテンポラリーダンスを習いにニューヨークに行ったりもして。詩を書き綴ったり、歌ったり、踊ったり、もともと不器用な性格ですが、何か表現することで自分を保ってたところはありました」

-今は神戸にお住まいになり、県内で数々のライブ活動をされています。神戸に来るきっかけは何だったのでしょうか。

「昨年、あるCMの曲を歌っていたんですが、その15秒のCMを今の仕事のパートナーである波戸岡さん(サンドリオングループ代表)が偶然テレビで聞いていて、ホームページから“是非神戸に歌いに来て下さい”とメッセージをくれたのがきっかけです。自分の歌を聞いてくれてた人がいたんだ!!まさか!ってびっくりしたし、すごく嬉しかったです。すぐに神戸行こう!って思いました」

sdim0209インタビューは、波戸岡氏が経営する洋菓子店で行われた

―それが、県内100 カ所を回るHYOGO 100 LOVE♡ LIVEの始まりだったのでしょうか。

「初めて神戸に来た日に、波戸岡さんがクラブ月世界という元キャバレー場に連れて行ってくれて“ここでライブをしましょう”と言ってくれました。すごく素敵な会場で、“ここで歌いたい!”って一目惚れしました。でも実際表に立って歌うことは少なかったし、東京でも作詞作曲などの裏方の仕事をしてたので、“私にはこんな大きい箱を埋められる力はないです”ってそのときはお断りをしたんです。すると波戸岡さんが、“じゃあ小さな所から始めてみよう。神戸は日本で一番バーが集まってる街だから、神戸らしい場所でやってみよう。1年かけてクラブ月世界で歌えるアーティストになろう”と言ってくれました。それがHYOGO 100 LOVE♡ LIVE のスタートでした」

―首都圏で生まれ育った小関さんにとって、神戸という街はまさに縁もゆかりもない土地。東京から神戸に移り住んだことで、戸惑いなどは感じましたか。

「人見知りな自分の性格に戸惑いながらも、“ダンス習いにニューヨーク行こう!”、“音楽修行しにパリ行こう!”とか直感即行動型で生きてきた人間なので、新しい土地はむしろワクワクします。そして、神戸じゃなかったら私は今こうして歌い続けていられなかった。他県から来た見ず知らずの私に、路地裏の飲食店のオーナーさんがライブをするチャンスをくれて、1人から2人、2人から3人って、少しずつ色んな方に聴いて頂けるようになりました。歌う場所が増えていくにつれ、“歌っていいよ”って神戸の街に言ってもらえてる気がして。それが本当にありがたくて嬉しいです。大人になってからも、いくつになっても、生まれ育つ場所ってあるんだなって思いました。今自分は神戸に育ててもらってます」

img_1203ライブは何も屋内だけにとどまらない。しっとりとした歌声と潮風が心地よく混ざり合う

“助走”を嫌う夏木マリさんから教わったこと

―つながりを強く感じる瞬間は例えばいつですか。

「お客さんはもちろんですけど、歌う場所を提供してくださるお店の方々。大御所と呼ばれている歌手の方々の駆け出し時代を知っている月世界の社長さんに、“スマホで簡単に音楽が聴ける時代に、お前みたいに足で地道に回って歌い続けているヤツいないよ。だから、俺応援するよ”と言ってもらえて。世間では私みたいに転々とすることをドサまわりというのかもしれません、でもそういうアナログっぽいことができるって今の時代、私の強みだと思うんです。今回のHYOGO 100 Love♡ Liveでも人と人との出会いから奇跡のような出来事が沢山ありました。その一つ一つが日々の原動力になっています」

―神戸で活動し始めて、自分の成長や変化を感じたことはありますか。

「HYOGO 100 Love♡ Liveがスタートして、シンガーソングライターといっても今までいかに自分が歌っていなかったかが分かりました。毎日毎日自分と向き合い、歌と向き合ううちに歌い方も変わってくるし、いい意味で肩の力が抜けてきたり、変なプライドや格好つけもなくなりました。神戸で歌うチャンスを頂いてる今、自分っていう人間が表現できることをどんどんやってみようって、今までで一番“今”にフォーカスしてる気がします」

-プライドを捨て去ることができたきっかけには何があったのでしょう。また、表現するということは、自分を裸にすることなのではないかと個人的に思います。自分の素を出してくことに不安や恥じらいは感じませんでしたか。

「夏木マリさんの舞台『印象派NÉO』のマリナツキテロワールというチームで学んでいることはとても大きいです。マリさんがワークショップのときに“崖から飛び降りろ”とよく表現することがあって。例えば、稽古で“怒り”を身体表現するというオーダーがあったとき、MAXの怒りをなかなか表現できずにいるとします。色々考えて探り探りやっていると、“助走をつけるな”ってマリさんが言うんです。どうやって怒りを表現しようかと考えながらやるんじゃなくて、それをいつでも何通りも瞬時に表現できるようにするためにも日頃から感情に対して細かく向きあうこと、日々の小さな出来事のヒントを見逃さず引き出しを増やすことが大事なんだと学びました。とにかくどんなときも、そのときの自分全てを思いっきり提出すること、“最初からMAX” で “崖から飛び降りる”表現を意識していくうちに、恥じらいや不安を感じることはおのずとなくなりました」

街角の音楽は、ムードと思い出をつくってくれる

―神戸の話に戻りますが、神戸という街に対してあえてダメだしをするなら?

「そうですね、三宮に新しい商業施設を作るのも大事だけど、もっと手を差し伸べなきゃいけない場所があるのかなとは思います。社長も常々言ってますが、神戸には歴史と風情あるビルがたくさんあるから、そういった今ある場所に、神戸じゃなきゃいけない若者たちがもっと集まればいいのに。夢を持って神戸を出る人を止める事はなかなか出来ない。むしろ神戸で活躍したい・夢を叶えたいという若者がまだまだ全国にいるはず。本当の神戸らしさを取り戻すには今なんじゃないかと社長に毎日聞かされています。神戸は地元愛を持った人たちと、神戸じゃなきゃいけない夢を持った人たちが一緒に手を取り合って、一緒に夢を叶えれる街だと思います。東京から神戸に来てこの1年、自分の環境はすごく変わりました。何か自分も神戸のためにできたらいいなって思う 特に最近。他県からもいろんな人が神戸に集まってほしいし、そして神戸出身の人たちがやっぱり神戸に戻ろう!ってなるときが来るから、そのときは皆で一緒にもっと神戸を盛り上げていきたい!と事務所やライブ会場でいつもイメージしています。神戸は夢を叶える街だと心から思います」

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-東遊園地での『芝生の演奏会』、何でもない日にオープンテラスのカフェでジャズの演奏があったりと、神戸には街角の音楽があります。街に音楽が溶け込む環境があることについて、どう思われますか。

「これぞ神戸!神戸のいいところだなぁって思います。街に音楽が流れていると、偶然通りかかった人がそれを耳にする。流れている音楽が初めて聴く曲だったとしても、匂いとか味とかと同じで、“あの時神戸で聞いた曲だ”って、その人の人生の大事な思い出の一つになるかもしれない。音楽は記憶と密に結びつくものだから。それに、生演奏は演者の温度がお客さんに伝わる。デジタル化が進む世の中だけど、今こそアナログのあったかさを大事にしたいし、生演奏で音楽を楽しめる街神戸って本当に素敵だと思います。『芝生の演奏会』では都会のど真ん中で大人も子供も一緒になってゴロンとくつろいで音楽を聴いたり、子供は広い芝生で遊べるし、大人はお酒も楽しめるし、素晴らしい空間だなと思いました。私も一度演奏させて頂いたんですが演奏していてとっても楽しかったし、沢山の出会いもあってすごく幸せな時間でした。神戸=ジャズというイメージもあるけれど、ジャズや他の音楽にとどまらず色々な文化や生活などを受け入れ、神戸式に融合させる事が港町の歴史だと思うので、自分自身神戸に来てから街場でジャズも学んでいます。色々な人・コト・モノを受け入れるという考え方が1年でガラっと変わりました。沢山のライブを通して、雰囲気 Moodって本当に重要なんだと神戸の街に学びました。神戸にはMoodがある場所やシチュエーション、人たちで溢れてる」


日仏英の3言語を織り合わせた曲を制作する小関さん。次回は、言語をサウンドとして捉える小関さんの真意や、映画監督ジャン・リュック・ゴダールの作品のセリフから引用したという、自身の作家名義『ENVIE』に込められた思いを語っていただきます。

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仲村 友樹

政治、ビジネス、文学、アート、自然まで色々なことに興味があります。むさぼるように読む本や雑誌からの知識でぼくは成り立っています。ただ、頭でっかちにならないように一応は気をつけているつもりです。
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株式会社イディー(英文表記:IDEE INC.)
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