公共性とデザイン性を両立する方法

公共性とデザイン性を両立する方法

制作事例を見ていただいたらお分かりになるかと思いますが、弊社では毎月たくさんの県や市などの公共的な媒体を制作させて頂いています。広報誌にせよポスターにせよグラフィックデザインは、基本的には不特定多数の方々の目に触れるものなので、多かれ少なかれ公共性を持っていなければいけないとされています。

ただ、その中でも県や市の媒体は、行政組織という性格上より高い公共性を求められるデザインの仕事といえます。今回はその「公共的なデザイン」について、公共機関の媒体を数多くデザインしてきた私の視点からお話したいと思います。

ムラなく、クマなく

公共性の高いデザインとはどんなものでしょうか。一言でいえば「伝えたいすべての人に、同じ内容が伝わる」デザインです。年齢や性別などによって受け取る印象が変わらず、伝えたい内容がムラなくきちんと伝わるもの。その内容に過不足があったり、過剰な演出があっても、それは公共性が高いとは言えません。そして、暗い場所や人混みの中にいる方、また高齢者や弱視、色盲の方に対しても、一定の視認性を持つなど、さまざまな環境や人々に寄り添ったデザインであることが必要です。

公共性の高いデザインとは、「伝えたいすべての人に、同じ内容が伝わる」ことを目指す訳ですが、この高いハードルはデザイナーを苦しめます。その目的を意識しすぎると、当たり障りのない平凡なデザインになってしまいかねないからです。また、デザインに魅力がなければ、そもそも手に取ってもらえないという問題も出てきます。

公共性と、魅力的なデザインは両立できるのでしょうか。

「みんな」を細分化・具体化していくと、「みんな」は「みんな」じゃなくなる

魅力的なデザインという定義もまた、難しい問題です。「(見た目が)美しい」というのは大前提ですが、ここでは、その媒体に応じた設計がなされたデザインと定義して進めたいと思います。設計とは「誰に読んでもらいたいか、何を伝えたいか」の明確化です。それをきちんと決める事で、それらの人に向けた適切なデザインを行う事ができます。逆にそれが無く「みんなに読ませたい」という曖昧なものでは設計ができず、派手な色で文字を大きくして並べるだけ…という結果になってしまう事も。

「みんな」を解剖するための思考法

弊社へのご依頼の中には「若者にも読んで欲しいし、高齢者にも読んで欲しい」「男性にも女性にも読んで欲しい」という、一見相反するような内容のものも多々あります。そんな時はどうするか。その両方をカバーするデザイン設計の方向性を探っていくことになります。

設計時に役立つのは、目的と視点の視覚化です。視点ばかりで混乱しますが、傘をイメージすると分かりやすくなります。クリアしたいポイントを言葉にし、放射線状にチャート化します。nakatsuka_zu

全てを高いポイントでクリアすると、グラフの面積が増え、広げた傘を上から見ているようになります。逆に一部でもクリア出来ないとその部分が抜け落ち、傘として成り立たないものになってしまいます。これを「傘のデザイン思考(umbrella thinking)」といいます。

その傘で雨が防げるかどうか、常に意識しながらデザイン制作を進める事で、何が足りないか、何が必要かを具体的に考えやすくなり、公共性が高く魅力的なデザインに早く到達できる可能性が上がります。

デザイナーは最低限、2人分の目を持っています。制作者としての目と、受け手としての目。そして優秀なデザイナーは、さらに多くの目を持っています。男性の目、女性の目、高齢者の目、子供の目、主婦の目、サラリーマンの目…ペルソナとも言われますが、自分とは違う仮の人格を自分の中に持ち、必要に応じてそれらの人を呼び出すことが出来ます。目の精度が高い人格を自分の中にたくさん持っている人は、同じ時間をかけてデザインを作る中で、大勢の目を通すことができるというわけです。きちんとした設計があることで、ひとりのデザイナーの中で大勢の「目」が機能し、デザインが作られていきます。また、弊社のように男女問わず若手からベテランまで、幅広い年齢層のスタッフがいれば、実際に十数人の目のチェックを経てデザインが作られることもあります。

公共性と魅力的なデザインは両立できる

公共的なデザインのポイントは、「伝えたいすべての人に、同じ内容を伝わる」ことです。その上で、魅力的なデザインを作るなんて無理なように思えてしまいますが以下のポイントを押さえることで、実現性はぐっと上がります。

・「どんな人に、何を伝えるのか」をきちんと設計する
・「傘」(=多くの視点)を意識する

この2点を押さえることで、魅力的な公共的なデザインに近づくはずです。

仲村 友樹

政治、ビジネス、文学、アート、自然まで色々なことに興味があります。むさぼるように読む本や雑誌からの知識でぼくは成り立っています。ただ、頭でっかちにならないように一応は気をつけているつもりです。
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