【神戸邂逅】新開地のまちづくり・高四代さん#3 人生の転機を与えた大震災

【神戸邂逅】新開地のまちづくり・高四代さん#3 人生の転機を与えた大震災

連載企画【神戸邂逅】とは

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神戸およびその周辺地域にて、大資本が集まる東京とは一線を画すような取り組みを行う人に焦点をあてたインタビュー企画。邂逅とは偶然めぐりあうという意味。思いもよらなかった神戸の魅力に出会えるかも。


本企画第1弾目として登場していただいているのは、歴史と新しい文化が交差する場所、新開地のまちづくりに取り組む高四代氏。新開地については今回の記事が最終回。混乱のなかでこそ、真のリーダーシップが試される。大震災という危機的状況で高さんがとった行動とは


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高四代(たか よんだい)

新開地周辺地区まちづくり協議会 会長
新開地まちづくりNPO 理事長
神戸新開地商店街協同組合 理事長

新開地生まれ、新開地育ち。新開地商店街にて、理容室「天龍」を経営。
昨今の新開地の盛り上がりを演出してきた立役者。
当初は商店街のいち音楽イベントにすぎなかった『新開地音楽祭』を、
8万人を集める大規模イベントに育て上げた。

前回の記事『#2 ビルじゃなく、文化をつくる』はこちら

上層部内でトップダウン的に決められたリーダーと、草の根から生まれたリーダー。 どちらのリーダーが“この人についていこう”と人々から思われるのか。高さんは…

―高さんは、新開地まちづくりNPO理事長の他にも、神戸新開地商店街協同組合の理事長も務められていますね。就任までの経緯を教えて頂けますか。

「おかしな話やと思われるかもしれんけど、いつの間にか理事長になってたって感じやろうか。ただ、転機があったとすれば、やっぱり1995年にあった阪神淡路大震災かもしれへん。新開地もごっつい被害があってね、近所の人らもみんな混乱してもうとってん。そのときに、ぼく思ったんよ。“こんな大きい地震やったら、でっかい津波がくるかもしれへん”って。やから、それをみんなに伝えて山の手のほうの楠中学校まで誘導していった。それが直接的な理由か分からんけど、だんだんぼくの周りに人が集まってくれるようになって、ついには避難先の学校の世話人役を頼まれるようになった。

2%e4%b8%81%e7%9b%ae%e7%9b%b4%e5%be%8c震災直後の新開地2丁目、いまにも崩れ落ちそうな店舗

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湊町付近、足の踏み場もないほどに瓦礫が散乱している

一応責任は全うするタイプではあるから、例えば自衛隊の方々から届けてくれた食料やら生活用品などの物資を、奪い合いとか盗難のトラブルが無いように注意していた。そしたら、同じように避難先になっていた他の学校の人らが“どうしたらそんな風に、混乱なく秩序を保って避難生活ができるんですか”って研修に来られる人らが現れたんよ。ぼくも、そのときはびっくりした。そんな様子を偶然見てたんやろうか、当時の楠中学校PTA会長の方が、“高さん、PTA会長なってもらえへんか”とおっしゃった」

―大震災という危機的状況は、組織の指揮系統をも麻痺させ、人的な上下関係が存在しないフラットな状態を作り出した。その中から自然発生的に生まれたリーダーが、高さんだったのではないかと思います。まずは、PTA会長になられた。

「そこからはあっという間やったかもしれない。最初の方にも行ったけど、震災後ボートピア建設を巡って組合が分裂した。本当に意見が真っ二つに別れて、ついに組合自体が空中分解してしまった。当時の理事長さんらが自主的に辞めていってしまってん。そしたら、“もうあんたしかおれへん”って言われて、結局ぼくが理事長に就任した」

―急展開でしたね。

「うん、それで就任後はボートピア建設の件も、賛成というよりも“同意”という柔らかい言葉を用いて、とりあえずは事態を収束させた。それから数年でまちづくりの組織でも理事長に就任したって感じやろうか」

背負っているものが、自分を突き動かす

―高さんには新開地へのただならぬ愛郷心を感じるとともに、その思いを実際に行動で示されている様子に感服します。高さんをそこまで突き動かす原動力は何があるのでしょうか。

「うーん、まあひとつに理事長という立場がそうさせているのはある。けど、もっと大きいんは自分の血やろうか」

―血?

「名前からあなたも察しがついたかもしれへんけど、ぼくの体には中国の血が流れている。その四代目やから、ぼくの名前も四代。明治時代に、祖父が日本へ渡ってきた。だから父も自分も、日本で生まれて日本で育った。ただ、ぼくはどこかでそれを抱えて生きてきた。例えば、人間だれしも自分の家では誰の目線も気にせずダラッとくつろげるけど、友達の家とかやったら自らを律して行儀よくしてるでしょ。それとちょっと似てるんかな、中国の血を引く自分は、日本ではより一層真面目に精一杯頑張っていかなくてはいけないという思いが心のどこかにずっとあった。

それは、28年前日本国籍に帰化したときから一層強く思うようになってね。帰化しようと思ったきっかけは、息子の将来を考えてのことだった。ゆくゆくは、息子が日本の大学に入学して日本の企業で就職するって考えたときに、やっぱり日本国籍の方がええんちゃうかって。

話を質問の方に戻すと、元中国人っていうのがぼくの心の中にずっとある。だからこそ、日本の人より倍動かなあかんっていう責任感があるんやと思う」

新開地というまちに歴史があるように、高さんの人生にもこれまで歩んできた軌跡がある。ただ、その人生も常に新開地に寄り添い、力を尽くしてきた。やはり高さんは根っからの新開地人だ。

新開地散策

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インタビュー終了後、高さんによるちょっとした新開地ツアーが始まった。

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目立たないところにも、遊び心溢れるアートが新開地には散りばめられている。この赤い車止めも、実は『ビッグマン』の落し物(靴)?なんだとか。他にも帽子の形をした車止めもある。

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高さんが経営する理容室『天龍』にもお邪魔させて頂いた。

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壁面にずらりと並ぶ野球帽は、神戸に寄港した潜水艦乗組員の方たちが高さんにプレゼントしたもの。店のウィンドウにも並べており、今でもその帽子につられた海上自衛隊の関係者がふらっと来店されるとか。ある種の広告宣伝になっている。

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最後に『ビッグマン(チャップリン)』の前で一枚。 

取材後記

どの写真でも高さんは満面の笑顔を見せてくださった。「たとえ苦手な人が相手やったとしても、ぼくはニカーッと笑顔で声をかけるねん」なるべくそうした方が良いと頭では思いながらも、高さんのようにそれを実践している人は少ない。

「行動を伴わない想像は何の意味も持たない/Imagination means nothing without doing

実際に、チャップリンが遺した金言である。この言葉を高さんがご存知であったかどうかはわからない。ただ、このチャップリンの言葉を座右の銘にいままで生きてこられたのではないかと勘繰ってしまうほどに、高さんは自らの想像を自らの行動によって形にしてきた。理想論に終止することなく、これまで様々な企画を実現してきた高さんの勇姿を、『ビッグマン』はしかと目の当りにし喜んでいるはずだろう。

関西弁をそのまま文字にすると、不思議と穏やかではない雰囲気というか語気の強さを感じられた方も中にはいらっしゃるかもしれない。でも、それは関西弁の特性に過ぎず、実際の高さんは気さくで笑顔が素敵な優しい方だった。そしてインタビューから分かるように、どんな人の意見に対しても耳を傾ける姿勢を忘れない懐の広さを持つ人だった。それはまるで、『カンブリア宮殿』に出演する敏腕経営者を、目の前にしている感覚を私に覚えさせた。ただ、高さんはリーダー風(かぜ)を吹かさないから、そこがまた人々を惹きつける魅力なのかもしれない。

そして、もう一点、昨今コミュニティデザインやインクルーシブデザインなど、市民参加型の課題解決の手法が目立つようになったが、それらが世間でもてはやされる前から、高さんはそれらを自身では気付かぬうちに体現していたかのようにも思えた。

新開地から今後どのような取り組みが生まれるのか、そして次世代の新開地を担っていくのはどんな人であろうか、今後も新開地から目が離せない。どこか懐かしさを感じるB面の神戸をぜひ多くの人に堪能してもらいたい。


B面の神戸・新開地全3回

『#1 古いはいつか新しさになる』

『#2 ビルじゃなく、文化をつくる』

『#3 人生の転機を与えた大震災』

本企画第2弾は4月14日(金)から公開予定・全3回


仲村 友樹

政治、ビジネス、文学、アート、自然まで色々なことに興味があります。むさぼるように読む本や雑誌からの知識でぼくは成り立っています。ただ、頭でっかちにならないように一応は気をつけているつもりです。

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