【神戸邂逅】新開地のまちづくり・高四代さん#2 ビルじゃなく、文化をつくる

【神戸邂逅】新開地のまちづくり・高四代さん#2 ビルじゃなく、文化をつくる

連載企画【神戸邂逅】とは

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神戸およびその周辺地域にて、大資本が集まる東京とは一線を画すような取り組みを行う人に焦点をあてたインタビュー企画。邂逅とは偶然めぐりあうという意味。思いもよらなかった神戸の魅力に出会えるかも。


本企画第1弾目として登場していただいているのは、歴史と新しい文化が交差する場所、新開地のまちづくりに取り組む高四代氏。本記事は、全3回の記事でお伝えしていくうちの2回目。なにか事を成し遂げられる人は、心惹きつけられる言葉をさらっと言い放ちます。本記事でも、そんな言葉にきっと出会えるはずです。


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高四代(たか よんだい)

新開地周辺地区まちづくり協議会 会長
新開地まちづくりNPO 理事長
神戸新開地商店街協同組合 理事長

新開地生まれ、新開地育ち。新開地商店街にて、理容室「天龍」を経営。
昨今の新開地の盛り上がりを演出してきた立役者。
当初は商店街のいち音楽イベントにすぎなかった『新開地音楽祭』を、
8万人を集める大規模イベントに育て上げた。

前回の記事『#1 古いはいつか新しさになる』はこちら

“仕事は押し付けるのではなく、まずは楽しんでもらう”

―決して大きい組織とは言えない新開地まちづくりNPOが、どうしてこんなにも多くのイベントを開催できるのでしょうか。

「それはやっぱりボランティアの人らの協力があってこそやって思ってる。ぼく、ボランティアの人らに口癖のように言うとうことがあるんよ。“新開地のために、とか思わなくても大丈夫やから、とにかくみなさん楽しんでください”って。ボランティアの人らに要求みたいなことは今まで一度たりともしていないと思う。むしろ、ボランティアの人らからの要望をぼくの方から聞くようにしてる。あれこれ細かい指図はせんと、やりたいことをなるべく自由にしてもらっている。すると、まあ皆さん本当に楽しんで意欲的に協力してくれるから、ボランティアしてくれとった人が後日友達を誘って来てくれたりして、どんどん人が増えていってん。そうやって、仕事を押し付けるよりも、まずは楽しんでもらうことで、結局新開地の活性化にもつながるっていう好循環を生んだんやと思う」

―そこらへんは、企業の組織運営にもどこか通じそうですね。ところで、新開地のまちづくりではアートを根幹に置いているとか。

「うん、アートビレッジセンターがあるしね」

kavc2KAVC(神戸アートビレッジセンター)、カブックという愛称で呼ばれる。館内の劇場では、映画や舞台、音楽ライブなどが催される

―ただ、アートというのはどこか取っつき難さを感じる人もいるのではないかと思います。どのようにアートを身近に、そしてまちづくりに有効活用していったのでしょうか。

「アートねえ。ひとつ思うのは、ぼくは色んなものがアートやと思うんよ。映画も、音楽も、演劇も、もっと言えばぼくの本業である理容もアートなんちゃうかな。すべてがアート。絵画を首を傾げながら小難しく眺めることだけが、アートの楽しみ方ではないと思うねん。もっとアートの定義みたいなもんは広げていいと思う。やから、アートの定義をぼくらが広げれば、そりゃアートを楽しんでくれる人も増えるでしょうって感じかな」

話題は、『(仮)神戸新開地演芸場』誕生の舞台裏へ。6代目桂文枝氏と交わした言葉とは

―商店街の入口に佇む『ビッグマン』は、まさに「アートの新開地」を象徴するオブジェですね。

img_9714新開地本通りの入口に鎮座する『ビッグマン』

「あれねえ、チャップリンをかたどってるんよ。昭和11年(1936年)にチャップリンが神戸に来はってな、当時は新開地が神戸の中心地やったから、ここらへんまで足を運んでくれた。淀川長治さん(1998年没・神戸出身・映画評論家)がチャップリンをもてなしていたはず。だから、なんて言うんやろう、ありがたいことに新開地にはもともとアートの土壌があったんやと思う。例えば、『(仮)神戸新開地演芸場』(来年7月開業予定)建設の話を桂文枝さんとしていたときも、“三宮やったら意味ないねん。演芸で栄えた歴史のあるここ、新開地でないと絶対あかん”ってあの人は言うてくれてた」

―今お話に出ましたが、二転三転しながらも上方落語の定席施設『(仮)神戸新開地演芸場』が新開地に建設されることが昨年末に決定しました。この件について指揮をされていた上方落語協会会長の桂文枝氏との間で、どのようなやりとりがあったのでしょうか。

「ほんまに色々あったなあ。2年前なんか、今ぼくらが居るこの部屋(新開地まちづくりNPO事務局内の一室)に、師匠(桂文枝氏)がいらっしゃってね、あの人断りに来てん“(上方落語協会の)会員からの反対が多くて、やっぱり新開地に定席作るんは無理や”って。それを言ってるとき、師匠はずっと伏し目がちやった。ぼくは真っ直ぐ師匠の目を見てたんやけど、師匠は斜め下の方を向いて、時折頭をくしゃくしゃにしてはった。相当悩まれていたんやと思う。でも、ぼくも “師匠、やめるんは簡単ですやん。頑張れるだけ頑張ってみましょうよ”と言って食い下がった。そしたら、さっきまで下を向いてた師匠が顔を上げて、“そうやな高さん、おれは桂の六代目や。そして、あんたは四代(高さんの氏名は高 四代)。合わせて十代や。プラス10で怖いもんなしや”って言うてくれはってな。ぼくも“そうやで師匠、師匠は笑顔でないとやっぱりあかん”と思わず応えた」

img_9700右の“六代”が、六代目桂文枝氏のサイン。高(四代)さんと合わせて十代

“ビルに魂を込めないとあかん”

―『(仮)神戸新開地演芸場』建設の舞台裏では、そんなやりとりがあったんですね。

―ところで、A面の神戸とも言える三宮地区では、高層ビル建設や道路整備を目玉に大規模都市開発が現在進行中です。こちらをハード面(物理的なもの)でのまちづくりと捉えるとすれば、アートやコミュニティに着眼した新開地での取り組みはソフト面(形がないもの)におけるまちづくりとして対比させることができると思います。ソフト面からまちづくりを行ってきた高さんの視点から見て、ハード面主体の三宮地区都市開発についてどう思われますか。

「仏様には心をいれなあかんとよく言うでしょ。そうでなければ、仏像はただの大きな石ころになってしまう。それと同じように、ただ単に新しいビルを建てるだけではあかんと思う。ビルに魂を込めないとあかん。じゃあその魂って何やと言われたらちょっと難しいけど、何ていうんかな、要はそのビルに入居してお店を出す人らに魂がなければいけないと思う。それは例えば、人の温かみや。その意味では、ぼくなんか新開地帰ってきたらホッとするねん。業務的で儀礼的な接客ではなく、ここの商店街の人らは心で対話してくれる。そうやって働く人が魂こめて頑張っていったら、新しいビル建てても、一過性のブームにはならずにたくさんのお客さんと長い付き合いができるんちゃうかな」

“自分が死んでも、まちは生き続ける”

―たいていの人は年を重ねるにつれて保守的になっていくように感じます。一方、高さんには新しい企画に挑戦したり、若者からの意見を柔軟に聞き入れられる度量を感じます。それらは、意識的にそう心掛けているのでしょうか。それとも、無意識的に?

「ぜんぜんそういうことについて考えたことなかった。意図してそうしようとするんでなしに、それがぼくの元々の性格なんやと思う。例えば、女性限定の新開地ツアーに参加してくれた人にぼくはよう聞くねん。“新開地の悪いところ、直したほうがいいところ教えて”って。それをひとつひとつ改善していきたいし、それがぼくの仕事やから。

ただ、ぼくも今年で70になるからなあ。今は全然元気やで、元気やけどいつ急に具合悪くなるんか分からんし、いままでのペースでばりばり動けるのはもしかしたらこの先5年もないかもしれん。でも、まちはちゃうんよ。ぼくが死んでも新開地は生き続ける。人間は100年も生きられへんけど、まちは100年どころじゃない。だから、今ぼくがやらなあかんことは、まちづくりの後継者を育成すること。同じ轍を踏みたくないねん。昔の人らは“新開地は不滅や”と過信しすぎて、その慢心が次世代へのバトンタッチを難しくし、その結果、新開地に活気が失われてしまった。ぼくはそうなったらあかん。自分が生きている間に、一丁前の若手を育て上げることがぼくの役目やねん」

―まちだけでなく、人もつくる、と。高さんの新開地への想いがひしひしと感じられます。他にまちづくりをするにあたって、心掛けていることはありますか。

「お店のシャッターをなくしたいとはずっと思ってる。例えば、地方都市を巡るテレビ番組とかで、閑散としたシャッター街の様子がよく映し出されるでしょう。

あれ、見てるとぼくめっちゃ寂しいねん。早々と店じまいするのはしょうがないとして、シャッターは下ろさんでもええやんって思う。というかもはやシャッターなんかきっと必要ないんよ。シャッター閉まっているお店が数件並んでいるだけで、一気にさびれた印象を与えてしまうでしょう。日本は治安がええんやから、シャッターは下ろさんでええんちゃうかな。そしたら、夜中商店街通る人でも怖くないし、お店のウィンドウを眺めているだけでも楽しいと思うねん。

せやから、新開地でもシャッターのないまちを目指している。2000年頃やったやろうか、“まずは、自分のお店からや”って思って、先陣を切って自分の理容店のシャッターをなくした。その動きを徐々に広めて、少なくとも新開地6丁目については、もうシャッターを下ろす店はゼロになったはずなんちゃうかな」


高さんの生い立ち、そして、理事長就任への経緯が明らかにされるとともに、おそらくどの組織にも通ずるであろう本来あるべきリーダー像が浮き彫りになる。

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次回は4月7日(金)公開予定・全3回

仲村 友樹

政治、ビジネス、文学、アート、自然まで色々なことに興味があります。むさぼるように読む本や雑誌からの知識でぼくは成り立っています。ただ、頭でっかちにならないように一応は気をつけているつもりです。

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